「マウスピース矯正からワイヤー矯正に変わることはある?」 装置変更が起こる理由と治療の考え方
御器所矯正歯科 院長の関です。
矯正相談の中で、最近特に増えている質問があります。
それが
「マウスピース矯正を始めたら、最後までマウスピースで治療できるのでしょうか?」
というものです。
マウスピース矯正は、
・見た目が目立ちにくい
・取り外しができる
・生活への影響が比較的少ない
といった理由から、近年とても人気の高い矯正治療の方法です。
そのため、
「できればワイヤー矯正は使いたくない」
「マウスピースだけで治療したい」
と考える方も少なくありません。
一方で、矯正治療は数ヶ月で終わるものではなく、
1〜3年ほどの期間をかけて進めていく医療です。
そのため、治療の途中で状況に応じて
装置の使い方を調整したり、治療方法を変更することもあります。
この記事では、
・マウスピース矯正からワイヤー矯正へ変更することはあるのか
・どのような理由で装置変更が起こるのか
・途中でワイヤー矯正になることは「失敗」なのか
といった点について、
矯正歯科専門医の立場から解説します。
矯正治療では装置変更が珍しいことではない
まず最初にお伝えしたいのは、
矯正治療では治療途中での調整や変更は珍しいことではない
という点です。
矯正治療は、
・歯の動き方
・噛み合わせの変化
・患者さんの生活状況
など、さまざまな要素を見ながら進めていく医療です。
歯の移動は、生体の反応によって起こるため、
すべてが機械的に計画通り進むわけではありません。
そのため、治療の途中で
・歯の動きに合わせて計画を調整する
・装置の使い方を変更する
ということは、矯正治療ではごく自然なことです。
これはマウスピース矯正に限った話ではなく、
ワイヤー矯正でも同じです。
たとえばワイヤー矯正でも、
・ワイヤーの種類を変更する
・補助装置を追加する
・部分的に装置を付け替える
といった調整は日常的に行われています。
矯正治療において重要なのは、
「どの装置を使うか」ではなく、最終的な歯並びと噛み合わせの結果です。
そのため、必要に応じて治療方法を調整することは、
むしろ安全で確実な治療を行うために大切なプロセスと言えます。
マウスピース矯正からワイヤー矯正へ切り替える主な理由
では実際に、
どのような場合にマウスピース矯正からワイヤー矯正へ変更することがあるのでしょうか。
主な理由としては、いくつかのパターンがあります。
歯の移動が計画通り進まない場合
マウスピース矯正では、
最初に治療計画を作成し、その計画に沿って装置を交換しながら歯を動かしていきます。
多くのケースではこの方法で問題なく進みますが、
場合によっては
・歯の動きが計画より遅い
・歯が予定通りの方向に動いていない
といったことが起こることもあります。
患者さんの実感としては、
「予定より歯が動いていないと言われた」
「追加のマウスピースが必要と言われた」
といった形で説明を受けることが多いかもしれません。
こうした場合には、
・新しいマウスピースを作り直す
・部分的にワイヤー矯正を併用する
といった方法で調整することがあります。
前歯の角度調整(トルクコントロール)が必要な場合
前歯の位置や角度は、
口元の印象に大きく影響します。
特に、
・出っ歯(前突)
・抜歯を伴う矯正治療
では、
歯の見える部分だけでなく、歯の根っこからの角度調整
が重要になります。
この調整を矯正では
トルクコントロールと呼びます。
ワイヤー矯正では、
・ブラケット
・ワイヤーの形状
を利用して、歯の角度を細かく調整することができます。
一方、マウスピース矯正でも一定の調整は可能ですが、
症例によってはワイヤー矯正の方が
より安定してコントロールできる場合があります。
そのため、治療の仕上げ段階で
部分的にワイヤー矯正を併用することがあります。
噛み合わせの微調整が必要な場合
矯正治療では、歯並びだけでなく
上下の噛み合わせのバランスも重要です。
治療の最終段階では、
・奥歯の接触
・咬み合わせの高さ
・歯の当たり方
などを細かく調整していきます。
この段階では、
・ワイヤー矯正の方が調整しやすい
・短期間で仕上げができる
ということもあり、
部分的にワイヤー装置を使うケースがあります。
装着時間が確保できない場合
マウスピース矯正では、
1日20時間前後の装着時間が必要とされます。
しかし実際には、
・仕事の都合
・食事の回数
・生活習慣
などによって、
装着時間を確保するのが難しい方もいます。
装着時間が不足すると、
・歯の移動が遅れる
・計画通りに進まない
ということが起こります。
そのような場合には、
治療を効率よく進めるために
ワイヤー矯正へ変更することがあります。
最初からワイヤー矯正が適しているケース
すべての症例でマウスピース矯正が第一選択になるわけではありません。
例えば、
・前歯の突出が大きい症例
・奥歯の大きな移動が必要な症例
・噛み合わせの異常が強い症例
・重度の過蓋咬合
などでは、
最初からワイヤー矯正の方が適している場合もあります。
これはマウスピース矯正が劣っているという意味ではなく、
それぞれの装置の特性によるものです。
ワイヤー矯正に変わることは「失敗」ではない
マウスピース矯正からワイヤー矯正へ変更するという話をすると、
「それは治療が失敗したということですか?」
と質問されることがあります。
しかし実際には、
途中で装置を変更すること自体は珍しいことではありません。
矯正治療の目的は、
・マウスピースで治すこと
ではなく
・歯並びと噛み合わせを整えること
です。
そのため、
最終的な結果を優先して装置を調整することは、
むしろ合理的な判断と言えます。
最近は最初から「併用」を前提にすることもある
近年では、
・マウスピース矯正
・ワイヤー矯正
を完全に分けて考えるのではなく、
症例に応じて併用する治療も増えています。
例えば、
・前半はマウスピース矯正
・仕上げだけワイヤー矯正
といった方法です。
このような治療は
ハイブリッド矯正と呼ばれることもあります。
装置の種類にこだわるよりも、
治療結果を優先する考え方と言えるでしょう。
まとめ:装置よりも治療結果が重要
マウスピース矯正からワイヤー矯正へ変更することは、
決して珍しいことではありません。
矯正治療では、
・歯の動き
・噛み合わせ
・治療の進行状況
に合わせて、
装置や方法を柔軟に調整することがあります。
大切なのは、
どの装置を使うかではなく、
最終的にどのような歯並びと噛み合わせを作るかです。
矯正治療を検討されている方は、
装置の種類だけで判断するのではなく、
・自分の歯並びにはどの方法が適しているのか
・どのような治療計画になるのか
を、専門医と相談しながら考えていくことが重要です。
御器所矯正歯科では、
マウスピース矯正・ワイヤー矯正の両方を選択肢として、
症例に応じた治療提案を行っています。
▶︎マウスピース矯正の適応については
こちらの記事でも詳しく解説しています。
【専門医が解説】マウスピース矯正で「治る症例」と「ワイヤーが望ましい症例」の違い
